SSDの価格が2~3ヶ月以内に急騰するという話―HDDの価格も引っ張られるかも

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Credit: Overclock3d.net
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どうやらNAND Flashの生産が需要に追いつかず供給不足のようで、これから「SSDの値段が一気に上がるかも」らしい。

台湾の調査会社TrendForceのサイト「DRAMeXchange」によると、MLC NANDの平均価格はこの四半期で6~10%上がり、TLC NANDも6~9%上昇。

Tom’s Hardwareが別の調査会社のTrendfocusに問い合わせた話では、SSDどころかHDD業界も“緊縮”供給の兆候を見せ始めているとかで、こっちもSSD同様に値上がりする可能性がある。

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SSDは需要過多に

SSDでは、iPhone 7やらフラッグシップのAndroid端末やらが前モデルから倍近いストレージ容量を持つようになったため、スマートフォン市場でのNAND需要が急増。ついでに、Samsungの「Galaxy Note 7」回収騒ぎで、少なくとも1億GB相当のNANDが破棄されたことになるとか……

ノートPCのSSD採用率も急上昇していて、今年出荷されたPCの内30%以上がSSDを搭載していて(DRAMeXchange調べ)、来年には52%まで上昇するとの予測もある1

加えて、エンタープライズでのSSD需要の高さが、コンシューマー向けSSDの価格に跳ね返ってくる可能性が高い。

というのも、現在エンタープライズ向けSSDの主要ベンダーは、ほぼSamsungの3D TLC NANDを使ったプラットフォームを提供していて、SamsungはエンタープライズSSDの需要急増を受けて、コンシューマー向けSSDの生産ラインの一部をエンタープライズ向けに切り替えたとのこと。

コンシューマーとエンタープライズを含めたSSD市場全体のメーカー別生産割合(2016年Q3)を見ると、Samsungが44.5%でぶっちぎりのトップなので、影響はデカい。

Credit: Trendfocus via Tom's Hardware

Credit: Trendfocus via Tom’s Hardware

Samsungは今後2年でエンタープライズ向けSSDの出荷数を3倍に増やす予定で、サーバーOEM事業の方がコンシューマーより重視される(利益率が高い)ため、小売市場でのNAND不足は悪化すると見られる。

実際、Samsungのコンシューマー向けSSDは以前から価格が上昇している模様。

HDDも供給不足になる?

一方のHDDベンダーでは、SSDにシェアを奪われたことによる急激な売上減少が続き、今年の初めに株価に結構なパンチを喰らったため、生産設備と能力、在庫を削減。しかし先月に、大容量HDDが前四半期比15%増という過去7年間で最大の驚異的な回復を見せ、アナリストもこの四半期でもトレンドが続くと予測しているとのこと。

が、先の通りHDDベンダーは既に生産量を削減してしまっていて、コンポーネントを提供するサードパーティのサプライヤーも既に生産を削減。加えて、これまでの損失と市場の不安定さから、需要増に合わせた新しい生産ラインの建設予定もないらしい。

結果、Trendfocusによると、HDDベンダーとサプライヤーは、大容量のエンタープライズHDDの需要に合わせて生産リソースを再配分しているようで、SSDと同様にコンシューマー向けのセグメントに台数が回されなくなり、Tom’s Hardwareでは、供給不足で価格が上昇すると予想。

さらにSSDの供給不足と価格高騰はHDDの購入を後押しすると思われるため、これでHDDまで不足すると、完全に負の連鎖。

そもそも3D NANDの生産に躓いたのも原因

話をSSDに戻すと、需要の急増も理由ながら、そもそもNANDの生産自体が滞っていたというのも大きな原因で、(Samsungは2012年に他に先んじて3D NANDを生産しているが、)大手ベンダーが今年になってようやく3D NANDを出荷し始めているというのがそれらしい。

3D NANDは歩留まりが悪く生産が難しいため、Samsung以外の大手ベンダー全てが当初のプラン通りに生産出来ず躓いた。3D NANDの増産に注力していた間、ベンダーは従来の2D NANDを増産しなかったため、3D NANDの量産が遅れがNAND Flash全体の供給に影響してしまったというオチ。

NAND Flashベンダーのロードマップ Credit: TechInsights via Tom's Hardware

NAND Flashベンダーのロードマップ
Credit: TechInsights via Tom’s Hardware

一応、Samsungは早い段階でNAND生産が不足していたため、平澤工場やら西安工場で増産をしている模様。Intel・Micron連合も3D NANDを量産出荷中で、2016年末までに2D NANDよりも3D NANDを多く販売する予定で、Intelは歩留まりが優秀らしい中国・大連の新工場を3D NAND生産に注力させ、MicronもシンガポールのFab 10で大規模な拡張工事を終えている模様。

SK Hynixも32層NANDを出荷したり、48層のテストやら72層NANDの計画を立てていたりするとか。

東芝とWDは共同で48層NANDを出荷中で、現在は三重の四日市事業所にBiCS工場を建設し、3D NANDに移行中。

完成すれば、四日市事業所は世界でも最大規模の工場になるので、WDと東芝がBiCS 3D NANDの生産を本格的に開始すればNAND不足も緩和される見込みはあるものの、完成が2017年でフル稼働は同年度中予定と東芝が言っているので、少なく見積もっても来年前半までは供給不足が続きそう。

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これから反動が来るかも

今年の春頃から供給不足がサードパーティのSSDベンダーの多くは事態を見越して既に何億ドル規模の膨大なNANDを確保していたため、その蓄えのお陰で価格の上昇は緩やかに進み、今までは小売市場へは限定的な影響で済んでいた様子。

しかし、この供給不足は想定されていたよりも長く続いていて、Tom’s Hardwareではこのまま来年末まで続くと予想。既に前述のNAND貯蓄は枯渇しているか、それに近い可能性が高いため、近いうちに小売価格の上昇が一気に進行する可能性があるとしています。

なお、供給不足になると真っ先に切り捨てられるのは小規模なセグメントなので、USBメモリーが他に先んじてNAND価格急騰の煽りをくらうかも、とのこと。日本でもUSBメモリーが急に値上がり始めたら、SSDもヤバいかもしれない。

アナリストは今後数ヶ月間でSSDの価格は20~25%上昇すると予測しているらしいので、SSDやらHDDを購入するなら早めに買ったほうが良いかも。

1TBのTLC SSDが2万切り始めたらゲームインストール用に買おうと思っていたけど、今のうちに買うべきか……

ゲーム用途ならほぼ読み出ししかしないのでMTBFは気にしなくて良いので、(ベイに余裕があれば)500GB SSDを2つの方がコスパは良いかも。出来れば年末年始の商戦までなんとか相場持ち堪えてくれないかなぁ。


  1. ちなみに、来年SSDを搭載して出荷されるデスクトップPCは13%しかないとの予測。ショボい。 

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