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10月にTHX AAAテクノロジーを搭載したヘッドホンアンプ「Drop + THX AAA 789」のレビューを書きましたが、その後中国SMSL (Shenzhen ShuangMuSanLin Electronic Co., Ltd.)から、同じくTHX AAA採用のデスクトップヘッドホンアンプ「SP200」が発売されてました。
THX AAAは、低雑音アンプを実現する米THX社の特許技術。用途別にいくつかのリファレンス回路設計がありますが、SP200は最上位の「AAA-888」(モノアンプ回路x2構成)を採用しているとのこと。THX AAAの細かい話については「Drop + THX AAA 789」のレビューで書いたのでそちらをどうぞ。
手持ちのDrop + THX AAA 789は本当に低ノイズで、THX AAA-888ベースという時点でSP200もノイズの少なさは約束されていると言って良いでしょう。
価格はAmazon.co.jpのマーケットプレイス価格(メーカー公式)で31,500円と、流石中華メーカーだけあってTHX AAA採用のデスクトップHPAとしては2019年末時点で最安。こちらもDrop + THX AAA 789と同じく単機能HPAなので、DACは別途必要です。
およそ15cm四方とフットプリントがコンパクトで、その割に入出力共にバランスとアンバランス両方を揃えているので、かつ安いとなればかなり魅力的。何故か平行四辺形デザインな理由は謎(SMSLの他の製品は直方体なのに何故……)。
仕様
以下は公称仕様。本体に電源を内蔵しているので邪魔になるACアダプターがないのも地味なポイントですが評価したい。
製品 | SMSL SP200 |
---|---|
出力端子 | 6.35 mm金メッキTRS標準フォーン 3.5 mm TRS金メッキステレオミニ |
入力端子 | 3ピンXLRキャノン(バランス)x2 RCA(アンバランス)x2 |
ゲイン | Low: +6dB High: +18dB |
出力インピーダンス | 約0Ω |
出力(片チャンネルあたり) | 6,000 mW @ 16Ω 3,000 mW @ 32Ω 440 mW @ 300Ω 220 mW @ 600Ω |
周波数応答 | 0.1 Hz – 500 kHz (-3dB) |
出力ノイズ | 2.8 μV(A特性) |
信号対ノイズ比(SNR) | 130 dB(A特性) |
全高調波歪(THD) | -125 dB (0.00006%) @ 1 kHz, 32Ω |
全高調波歪+ノイズ(THD+N) | -122 dB (0.00007%) @ 1 kHz, 32Ω -117dB @ 20 – 20 kHz, 32Ω, -3dB |
サイズ | 160 x 149 x 73 mm |
重量 | 772 g |
Drop + THX AAA 789のレビューで触れましたが、本来のTHXAAA-888のリファレンスデザインは入力オペアンプが「OPA1612」なのではという話が出ていましたが、SP200のPCB写真のオペアンプの刻印を見ると「1612A」とあるので、その話に真実味が出てきました。
測定値
さてお馴染みAudio Science Reviewの測定では、Drop + THX AAA 789と比べると若干劣るものの、流石の低ノイズを記録。
ただし最高SNRは同等ですが、出力を絞って合わせた50 mV条件では7 dBの差を付けられているので、絞って使う場合はDrop + THX AAA 789に軍配が上がる。
ASR実測値 | SP200(SMSLサンプル品) |
---|---|
THD+N | 0.000142% @ 1 kHz, 5.695 V, 600Ω |
SINAD | 116.948 dB |
SNR | 123.285 dB 82.894 dB @ 50 mV, 600Ω |
出力(Gain Low / High) | 200 mW / 326 mW @ 300Ω 1.8 W / 2.9 W @ 33Ω |
出力インピーダンス | 1.3Ω |
ステレオバランス差 | -70 dBまでほぼなし |
上記の結果はサンプル提供品での測定だったので、「SMSLが“ゴールデンサンプル”を送って来た可能性があるんじゃないか」と、amirm氏にわざわざ製品発売後に1台買って送ったフォーラムユーザーが居たようで、そちらの製品版での測定結果がこちら。
ASR実測値 | SP200(ユーザー提供品) |
---|---|
THD+N | 0.00015% @ 1 kHz, 5.603 V, 600Ω -115 dB @ 300Ω |
SINAD | 115.908 dB |
SNR | 121.232 dB |
ステレオバランス差 | -30 dB以降で音量差が顕著に |
結果としてはTHD+NとSINAD、SNRは最大でも-2 dB前後の差でおよそ測定誤差と言える範疇ですが、チャンネルバランス差は大きく差が出ています。サンプル数が2つしかないので断言は出来ません(ユーザー提供品が大ハズレだった可能性とか)が、ボリュームノブの品質のバラつきが大きいのかもしれない。
そもそもの仕様としてSP200は最大出力がかなり大きく、スタジオ向けだったりドライブするのにパワーが必要な(能率の悪い)ヘッドホンやイヤホンを繋ぐ場合は問題にならないと思いますが、インピーダンスが低く高効率なものを繋ぐ場合は相応にボリュームを絞ることになるため、その時にステレオバランスがズレやすくなるのはあまりよろしくない。
高能率なモノを繋ぐときは(DAC側で)入力ラインのレベルを下げてしまう(DAC出力のSNRは下がるけどステレオバランスが狂うよりマシ)とか工夫が求められそうなので、その辺りを考慮した上で買うべきかも。
若干作りが甘い気もするがコスパで考えればアリ
色々書きましたが、THX AAAの出音のクリアさはお墨付きで、出力もパワフルで力不足でドライブできないヘッドホンも無いので、低能率ヘッドホンと組み合わせて使うなら特に欠点もなくコスパ最強のHPAと言えるかと。
外観(メーカーロゴや製品名と他のフォントが違って微妙に統一感がなかったり、筐体が平行四辺形の謎形状だったりする辺りとか)が若干ダサい気がしないでもないですが、その分安いと思えば全て許せる。単機能HPAなので、DAC付属のヘッドホン出力に満足できなくなった人とかに丁度良さげ。
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