クラウドゲーミングの遅延を解消する技術『DeLorean』―Microsoft Researchが発表

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なるほどそんな事出来るのかって感じ。

TechCrunchによると、Microsoft Research (MSR)1が“クラウドゲーミング”の遅延問題をどうにかする仕組みを発表したらしいです。

クラウドゲーミングって何

まず“クラウドゲーミング”ってなんだって話をしておくと、ゲームをクラウド化、つまりプレイヤー側の端末は「プレイヤーの操作」をサーバーに送信するだけで、それによって発生する「演算処理」は全てサーバー上で行い、プレイヤー側の端末はその「結果」を映像として受け取るということ。

このクラウドゲーミングの「ゲームプレイをネットワーク越しにサーバから提供する」というやり方には、従来の家庭用ゲーム機やPCでゲームをする場合と比較して、大きなメリットがいくつかあって、

  • HD解像度のストリーミングビデオを再生出来るだけのスペック(とまともな入力装置)を持つデバイスなら、どんなゲームでもプレイ可能。スマホでゴリゴリの3Dゲーとか遊べる。
  • 最新のゲームを遊ぶ場合、動作に必要スペックを満たすためにコンソールのハードウェアを買い換えることに比べ、クラウドの技術的な改良(サーバーやインフラの増強とか)に多数のプレイヤーが投資する方がプレイヤー1人あたりで見た時、コスト的に安い。
  • 初回起動の前に20GBとかある巨大なファイル群をダウンロードしてこなくていいので、ゲームをすぐにプレイ出来る&ストレージの残容量を気にしなくて良い。素晴らしい。

ざっと上げるとこんな感じ。

現状、クラウドゲーミングを提供するサービスは、OnLive、Sonyによって買収されたGaiKai(今はPlayStation Nowと名前を変えて復活した)、AMDのRadeon SkyやNvidiaのGridなど既にいくつかあります。

しかし、どのサービスでも解決できず、未だに問題になっているのが、遅延の存在。

ただのビデオストリーミング等と違って、ゲームの場合はプレイヤーの操作というランダムな要素があり、それによって表示するべき映像が違う以上、バッファリングができません。

その為ローカルでゲームが動いている時と比較して、操作の入力から実際に映像が動くまで(サーバーからレンダリングされた結果が返ってくるまで)のどうしようもない遅延が発生します。

今回のMSRの研究レポートによれば、ネットワーク環境が整った住居でも、クラウドゲーミングでは100 ms以上の遅延が発生するとの事。

100 msということは、60 fpsで動いているゲームの場合、大体6フレームの遅れ(1フレームがおよそ16.77 ms)。
ターン制RPGのようなゲームはともかく、アクションゲームは厳しいです2

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“推論型実行”エンジン、 DeLorean

そこでMSRが思いついた方法が、DeLorean(デロリアン)と名付けられた推論型実行エンジン (Speculative Execution Engine)。

このプルトニウムで動きそうな名前のエンジンは、MicrosoftのAzureサーバーとプレイヤーのデバイスとの間に、ネットワークが遅延する要因がどれだけ複数かつ多層的に存在しても、見かけ上は遅延の無いゲームプレイを提供するというもの。

そのDeLorean、“推論型(speculative)”実行エンジンというのがキーワード。

さっきも書いたように、ゲームの場合バッファリングが出来ません。

が、“次に起こりうるアクション”、即ちプレーヤーの入力を“推測”する事が出来たら……

今回MSRが行ったのは、プレーヤー個人と、過去にプレイヤーの膨大なデータを分析する事で、その“推測”を行い、それを元に予測されるいくつかのアクションの「結果」―レンダリングした映像―を事前にプレーヤーのデバイスのメモリ、つまりバッファに送り込むというもの。

そして実際のアクションの直後、予測通りのアクションならば、クラウドからでなくローカルのメモリから最適な画像をレンダリングすることで、「見かけ上」遅延なくゲームプレイ出来る……という訳。

実際の動作としては、例えばスーパーマリオなら、ノコノコが出てきたら殆どのプレイヤーはジャンプして「踏む」か「飛び越えて避ける」可能性が極めて高いので、そのパターンを優先的にレンダリングしてバッファに送り、その後、上記の予測を外した場合に備えて「避けずに当って死ぬ」パターンを予め……みたいな事だと思う。多分。

実際、

報告書はその結論部分で、この調査に加わったユーザの多くが、高速アクションの多いDoom 3とFable 3をプレーして、ローカルシステム上と、DeLoreanを250ミリ秒の遅延に設定したクラウドからのゲームの、違いを判別できなかった、と述べている。

via TechCrunch

とのことで、これが事実なら画期的な技術ですわ。
普通250 msも遅延してたらキーボードなりコントローラー叩きつけてるか窓から投げ捨ててるね。

が、このDeLoreanも良いことだらけではないようで、この方式を実行するには、従来のクラウドゲーミングに比べて1.5倍から4.5倍くらい高速なネットワークの帯域が必要になるとのこと。

操作前の時点で何パターンかレンダリングして送らないといけないんだから当然ではあるけど、そこまで高速な回線となると「最低でも光回線」って感じですかねぇ。

とまぁ、夢のある技術ですが、LTEとか携帯通信網を使って「Xboxのストリーミングサービスで、スマホからどこでも最新ゲームを遅延なしで楽しもう!」みたいな未来はまだまだ先のよう。
その前に通信量が多すぎて一瞬で通信量上限超えてしまう方が問題だけど……


  1. マイクロソフトリサーチ(Microsoft Research、MSR)
    計算機科学に関するさまざまな研究を行う機関で、リチャード・ラシッド博士がマイクロソフトに入社する条件として、同研究所の設立と、その独立性を要求し、1991年9月に設立された。
    名称からもわかるように、マイクロソフトの関連機関ではあるものの、完全に独立した研究機関であり、そこで行われる研究内容については、たとえマイクロソフト本社の首脳陣であっても一切の口出しは出来ないことになっている……らしい。(via マイクロソフトリサーチ – Wikipedia

  2. ちなみに先のレポート内では、プレイヤーは60ミリ秒のレイテンシでも気付き、100ミリ秒を超えるとイライラするという調査結果が紹介されていたりしますが、多分FPSゲーマーや格ゲー音ゲープレイヤーはもっとシビアでしょう。2フレーム辺りで気づきそう。 
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