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Intelが7月23日に2020年第2四半期の決算報告を実施。そのなかで同社のプロセス開発についての情報もアップデートされた。
決算内容はこちら。
CPU供給不足問題はようやく解消へ。Alder Lakeは2021年後半に登場
まずは10 nm関連から。以下の発言は全てIntelのBob Swan CEOのもの。決算報告の書き起こし全文は以下リンク参照。
- 生産能力の増強と供給改善は大きく進歩を遂げ、2020年上半期で計画を20億ドル上回った。下半期ではPCインベントリを通常レベルに戻す予定
- 10 nmベースの製品の出荷を強化し、1月時点の想定から20%以上増やす見込み
- (10 nmベースの)「Tiger Lake」は今後数週間で出荷を開始する。年末には10 nmベースのIce Lake Xeonスケーラブル (Ice Lake-SP)の初期生産出荷が見込まれている。
2018年から引っ張り続けていたCPU供給不足問題は、ようやく解消の目処が立ったらしく、下半期で元の水準になる模様。10 nmラインへの需要も高く、供給不足解決のための全体の増産体制の構築に合わせて、当初予定から2割増しで動かすとのこと。
10 nmプロセス製造のTiger Lakeは今後数週間で出荷開始。次世代CoreプロセッサとしてCPUとグラフィックス、AIに画期的なパフォーマンスを提供するとのこと。メーカー出荷がこれからなので、搭載製品が市場に出回るのは第3四半期以降になる。
同じく10 nmのIce Lake-SPはCascade Lake-SPの後継にあたるXeon製品で、こちらは2020年末に初期生産出荷される予定。
- コンシューマ向けのAlder Lake、サーバー向けのSapphire Rapidsについては、2021後半に初期生産出荷予定
Tiger Lakeの後継となるAlder Lakeは、今回初めてIntelが公式に存在を明言したんじゃないかと思われる。XeonのSapphire Rapidsと合わせて、2021年後半の初期生産出荷を予定している。
10nmと10nm+と10nm++と……
Intelの10 nmプロセスは例によって改良を繰り返し数世代に跨って使われる見込みで、すでに投入済みの初代10nm、ICL-SPで使われる見込みの10nm+(第2世代)、Tiger LakeやSapphire Rapidsで採用予定の10nm++(第3世代)の3世代になる、というウワサ。
ザックリまとめるとこんな感じ。
アーキテクチャ | Ice Lake | Tiger Lake | Alder Lake |
---|---|---|---|
製品コードネーム | ICL-Y/U(/H) | (TGL-Y/U/H/S?) | (ADL-Y/U/H/S?) |
プロセス | 10nm | 10nm++ | (10nm++?) |
リリース(予定)日 | 2019 Q2 | 2020 Q3 | 2021 2H |
アーキテクチャ | Ice Lake | Sapphire Rapids |
---|---|---|
製品コードネーム | ICL-(X/W/)SP | (SPR-X/W/)SP |
プロセス | 10nm+ | 10nm++ |
リリース(予定)日 | 2020 Q4 | 2021 2H |
同じIce LakeなのにXeonでは10nm+になっていて、Core系で見るとTiger Lakeで10nm++にスキップしているので混乱する……
10 nmに続き7 nmプロセスの開発も遅延
ここからは本題の7 nm関連。
- 7 nmベースのCPU投入時期については、約6ヶ月の遅れが発生している
- 7 nmプロセスのコンシューマ向けCPU (Meteor Lake)は2022年後半~23年前半の初期生産出荷を見込む
- データセンター向け7 nm (Granite Rapids)の初期生産出荷は2023年前半を予定する
- データセンター向けGPU“Ponte Vecchio”は2021年後半~2022年初頭に
10 nmの開発にさんざん手こずっていたIntelですが、7 nmでも開発が難航している模様。
7 nmを採用したクライアント向けの“Meteor Lake(仮称)”は、2022年後半~2023年前半の初期生産出荷予定で、当初予定から半年遅れで投入される。同じ7 nmのサーバー向け“Granite Rapids(仮称)”は2023年前半の初期生産出荷を見込む。
7 nmで製造されるHPC向けGPU“Ponte Vecchio”は、2021年後半~2022年初頭の出荷を予定している。
Ponte Vecchioは米アルゴンヌ国立研究所のスーパーコンピューター「Aurora」向けに納入予定で、このシステムが2021年の納入とされていたため、2021年後半であればなんとか期日内、2022年にズレ込めば予定から遅れることになる。
- 遅れの主要因は7 nmプロセスの歩留まりで、開発ステータスとしては当初設定していた内部目標から約12ヶ月遅れている(本来は2021年に投入予定だった)
- 7 nmプロセスの歩留まり低下につながる「欠陥モード」は特定しており、根本的な問題を見つけたため、(これ以上の遅れに繋がる)基本的な障害はないと考えている
7 nmプロセスの開発が遅れたおもな原因は、(案の定)歩留まりが悪いため。
今後は予定通りに開発が進んだとしても、当初設定していた社内目標から丸1年遅れての完成になるため、ただでさえ10 nmでTSMCやSamsungに遅れている(フィーチャーサイズで比べると、両社の7 nmとIntelの10 nmが同規模か若干小さいとされている)Intelにとっては厳しい見通しと言える。
Intelでは、歩留まりの低下につながる「欠陥モード」は特定しており、根本的な問題解決の糸口を見つけているため、量産化に向けたこれ以上の基本的な障害はないという考えを示している。
- (プロセス開発の1年の遅れに対しMeteor Lakeは半年遅れであることについて、)プロセスの開発と採用製品のプランには、製品投入の遅れを防ぐためのバッファを設けているために遅れが圧縮されている。
- またマルチダイ設計とパッケージング技術の採用により、一部機能を別プロセスで賄えるため、プロセス開発と製品の遅延の差をさらに圧縮できる
AMDは、Zen2でコアとI/Oを異なるプロセスで別のダイを作り、パッケージで統合する「Chiplet」設計を採用したが、Intelも同種のマルチダイ構造の採用を進めるようです。
AMDの場合、製造コストが高い7 nmプロセスを使う場所を減らし、微細化によるメリットも薄いI/O関連を安価な14 nmで作ることで、製造原価を下げるという戦略に活かしているが、コスト削減のみならず歩留まりの確保にも寄与していると考えられている。
IntelもCPU部分だけを7 nmで作るなら歩留まりを引き上げられる可能性が高まる、ハズ。
社外への製造委託も検討、有力候補はTSMCだが……
- 10 nmから得られた教訓の1つが、プロセスの進歩に向けた開発はより複雑化し毎年成果を出すことは難しく、思い描いたとおりに上手くいくことは無いということ(Intel単体でムーアの法則に従い続けることは難しくなった)
Intel自身、7 nmが順調に開発できるとは考えていなかったということですが、このまま7 nmが(既に遅れているが)スムーズに開発できたとしても、10 nm / 7 nmと2世代連続で開発が遅れた経験から、5 nmでも開発が遅れれば他社との差が拡がってしまう。
- これ以上のスケジュールの遅れを回避するため、不測の事態の備えとなる緊急時対応プランへの投資も行なう
- 今後も自社のプロセス技術ロードマップへの投資は継続するが、自社での製造(現在は自社製造が8割)だけでなく、自社と社外を組み合わせての製造、社外のファウンダリへの完全な委託という選択肢も視野に入れている
さすがにIntelもこれ以上の遅れは致命的であると考え、最悪の事態に備え緊急時対応プランへの投資を行うと説明。
プランでは、自社fabでの製造だけでなく社外のファウンドリへの製造委託も視野に入れているという。
自社だけで無理なら他を使うというのは自然な選択で、すでにTSMCに対して一部製品(FPGAなど)の生産を委託している実績もある。
しかし、TSMCは直接のライバルであるAMDを顧客に抱えているほか、NVIDIAやAppleなど大口顧客だらけで生産ラインが逼迫しまくっているので、Intelが「やっぱ自社だけだと無理そうだからお願い」と言ったところでそれをカバーできるのかという疑問は残る。
まぁ5 nmの開発競争になるとSamsungが躍り出てくる可能性もありますが。
10 nmも14 nmのように息の長いプロセスになる
- 2020~22年までの製品ロードマップは、クライアントとサーバー両方で満足の行くものになっている(競争力のある製品と考えている)
- 10 nmでは14 nmと同じく性能が改善された別ノードを得られると期待している(前述の10nm++あたりの話)
- しかし2022年後半~23年以降については、引き続き強力なパフォーマンスを提供する必要がある
とりあえず量産を開始して軌道にのっている10 nmについては、改修して数世代使われる見込み。
- プロセス技術のロードマップの影響(開発の遅れ)を受けないよう、“マイルストーン主導”のアプローチで自社製品の競争力を保つ
- 高度なパッケージング技術と分散アーキテクチャを組み合わせることで、プロセス技術の選択に高い柔軟性が得られる
- プロセスロードマップがどうあれ、2022年のホリデーシーズンも含めて年1回の新製品投入ペースは維持していく
緊急時に備えて外注の選択肢も提示はしたものの、プロセスの微細化以外のアプローチから製品の改善を進めるとアピール。当たり前だが、出来るだけ外注はしたくないという意思を感じる。
ホリデーシーズン(年末)恒例の「年1回の新製品(新世代CPU)投入ペースは維持する」とハッキリ言及しているので、プロセス開発がコケようが、(この数年14 nmのアップデート連発でしのいだように)何かしらの新製品は出すとアピール。
これについては、顧客であるPCメーカーがCPUが変わらないと新製品が出せず、パートナーのためにも年1回のペースは崩せないという事情があるので、とくに驚きはない。
正直、プロセスノードの微細化はそう遠くない未来で限界に達するため、Intelは他社に先駆けて“アフター微細化”の問題に取り組むという見方もできるので、個人的にこれからのIntelの動きには注目と同時に期待もしています。
- プロセス技術は非常に重要な要素だが、製品の差別化を推進する6つの技術の柱の1本に過ぎない。次のIntel Architecture Dayでプロセス、パッケージング、アーキテクチャ、メモリ、相互接続、およびセキュリティ/ソフトウェアの6つの技術分野の進捗について詳細を説明する
プロセス開発の進捗を含めた技術的なアップデートの詳細は「Intel Architecture Day 2020」で説明される予定。
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